JR西日本 vs 沿線自治体
対立煽りではなく、双方の立場的に対立気味になるというだけだが、公表されている輸送密度が最低の芸備線(旧三神線部分)と、同じく廃線が危惧される木次線が合流する備後落合駅はメディアの注目を集め易い。
両路線とも国鉄再建法準拠の特定地方交通線に指定されたが、除外規定によって一旦は廃線を免れた経緯がある。JR発足当初はバブル期であり、団塊ジュニア世代が通学利用していた1993年頃まではそこそこの利用率はあったが、以降は少子化により通学生は減少の一途、更には2000年以降、沿線の過疎化に加え高規格道路の整備や高速バスの台頭によって日用客が壊滅的状況となったのは周知のとおりだ。
ただでさえジリ貧、これまでも騙し騙し継続してきたが、コロナ化が追い打ちとなって都市部や新幹線、関連企業の業績は悪化し内部補助で成立させてきたビジネスモデルが破綻し、21年2月にはJR西日本がとうとう音を上げた。
沿線自治体の首長や県知事は寝耳に水だというポーズをとっているが、あくまでも選挙や有権者を意識したパフォーマンスに過ぎない。
ただ、若い首長だと世代的に国鉄末期の社会情勢を肌で知らない場合もあるだろう。
例えば85年、国鉄は社会実験としてローカル列車の増便を行ったことがある。時刻表で口α(四角枠囲いのアルファ)符号の表示された不定期列車を覚えているのはアラフィフ以上かな。当時社会背景まで理解していた世代だともうちょい上になるかも?
40代は当時小学生だから丸尾君みたいな子はさておき、大勢は山田やはまじやブー太郎みたいな子どもだっただろう?(笑)
画像例は函館口の江差線だ(註釈と当該列車の掲示バランスで選んだだけで他意は無い)が北は旭川、南は鹿児島まで各局の拠点都市近郊でローカル列車の増発が行われた。
岡山、広島管内だと岡山口の赤穂線、吉備線、伯備線、下関口の山陽本線、山陰本線で実施された。東京近郊でも相模線、御殿場線、八高線、外房線、内房線、日光線で実施されている。
JRとなってからの広島管内では可部線北部でも廃線前に増発の社会実験が行われているが、定期利用が僅かに増えただけで日用の増客にはならなかった。イベント列車は永続的な集客との相性が悪いことも実証済だ。
JRは全ての経緯を踏まえた上での減便発表であり、今後の在り方についての協議を求めているのだ。
但し、今さら利用促進の草案にイベント列車だの、ファンやマニアを当て込んだ企画なんて挙げるようでは的外れだ。国鉄再建法が成立した40年前なら未だしも、似たような試行錯誤はこの40年間でも既に行われてきて、まともな成功例は無い。芸備線の廃止が囁かれた17年にマニアが大挙したことがあったが、今回の検討対象で公式データでは最小の輸送密度である東城~備後落合間の場合、前年比+2(9から11)と焼け石に水だった。
JRとしては地域からさっさと撤退したいが、公共交通機関としての建前があるから段階を踏んでいるに過ぎない。沿線自治体も沿線住民も積極的な利用をせず放置してきたツケを清算するときが来た。現実逃避は何れ向き合わざるを得ない時が来るものだ。結局は廃線に向かうが、建前が邪魔してプロレスを展開するのだ。
国鉄を継承したのだから、そういう有権者は未だに一定数いるが、既得権益にしがみ付きたがる老害同様に時代錯誤な考えだと一蹴しておく。国鉄は37年10ヶ月で民営化されたが、そのJRも21年6月で34年2ヶ月の歴史を刻んだことになる。
人間の思考も時代に合わせてアップデートしないとな。
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